Asia特集&コラム

キャリアマネジメント

Lesson10- シンガポールで学べる専門知識とグローバル学位(2)

“自己のキャリアに専門知識をつけよう(2)”

シンガポールで海外留学

シンガポールで海外留学

前回のエッセイでは、シンガポールがグローバル学位や資格取得の穴場スポットであることを皆さんにお伝えしました。
さて、今回は実際にキャリアアップをお考えの読者の方からのご相談をもとにカウンセリング、回答を致します。*ご本人の承諾を頂いています。

現在、シンガポールで働く、日本人駐在ビジネスマンからのご相談です。


ビジネスマンからのご相談

浜田寛さん
Profile : 日本の大学経済学部卒 現在、42歳
職歴:電子部品メーカーの経理・財務職にて10年以上勤務しており、
現在、シンガポール支社の経理財務部門全般の管理者として勤務。
シンガポールオフィスでは、20名ほどの海外スタッフの業績管理も担当。

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Question:

現在シンガポールで、日系企業の出向者としてエンプロイメントパスにて就業している者ですが、MBAの「エッセンス」的なものを学ぶようなコースがありますでしょうか?

Answer:

MBAのエッセンスが学べるコースをご希望とのことですね。
浜田さんがおっしゃる「エッセンス」とは、どのレベルまでをご希望なのかが、ちょっと解りにくい点がありますが、「できるだけ短期で働きながら学べるマネージメント理論のコース」という理解でお答えしたいと思います。

まず最初に、MBAとはどんなコースなのか?という説明をしましょう。
MBAとは、Master of Business Administration (経営管理学修士号)のことで、頭文字をとって呼んでいるマスターコースのことです。
最近のMBAコースの共通する基本的なカリキュラムは、以下のようなものです。
ファイナンス、アカウンティング、ビジネス&企業戦略、マーケティング管理&戦略、人的資源管理、組織行動、インターナショナルビジネス、定量分析&意思決定、プロジェクトマネージメント、マネージメントインフォメーションシステム、E-ビジネス等です。この他、その大学、ビジネススクールによって、地域の産業界のニーズに合わせ、大学独自の特色をだすために、アントレプレナーシップ(起業家精神)、マネージメントチェンジ(経営革新)、リーダーシップ、異文化マネージメント、アジアでのマーケティング戦略、コミュニケーション戦略などを追加してカリキュラムを組んでいるところもあります。


MBAコースのカリキュラム例

  • Accounting and Finance
  • Management Information Systems
  • Marketing Management & Strategy
  • Business Strategy
  • Organisational Behaviour
  • Economics for Management
  • Integrated Marketing Communications
  • Human Resource Management
  • International Marketing
  • Quantitative Analytic Techniques for Management
  • Project Management
  • Total Quality Management
  • E-Business

一言で言えば、経営学ですが、会社経営に必要なマネージメントは、業務レベルから、経営企画、開発のマネージメントまで、その理論、手法の種類、レベルなど多様です。昨今のビジネス環境のスピーディな変動を背景に、経営幹部には色々な事業形態や状況別によるマネージメント手法を使い分けることが求められてきています。 欧米では、様々なマネージメント理論と世界中の企業実例を検証、分析し、理論化されており、ビジネススクールではそれらを「マネージメント理論を知る」&「理論を使って分析シミュレーション」&「問題解決のための戦略立案」をする能力を育成することが主旨だと思います。経営学は、それらを知り、企業事例で思考の練習をしておくことで今後、様々な企業の局面で、経営幹部に差し迫るであろう問題に、自社の企業戦略や最適な管理手法を選びだし、問題解決力つけるための教育だと言えると思います。
一方で、「とにかくMBAを取得して、年収を2倍以上にするぞ!」という目的の方は、やはり、学校のブランドが卒業後の年収にとっては、大きな意味を持ちます。


Question:

私が調べた範囲では、正式な学位を取得するには、夜間コースでは最低、1年半(SMU)から二年半(NUS)の期間と、費用的にも、S$20K以上が必要であり、時間的にも金銭的にも、余裕が無い状況です。又、卒業前に帰任辞令が出る可能性があることも気になります。
一方、数日のコースでは余りにも短い感じがして、逆に物足りないのではないかと思えます。
特に転職などの予定はなく、現在の会社で勤めていくつもりですが、せっかく海外に来たので、海外で欧米系のマネージメントについて学んでおけば、将来、海外転勤など、仕事上で役立つかもしれないと思い検討しています。希望としては、3カ月から5カ月程度の期間の夜間コースで、費用的にはS$5K前後位の内容の物があればと思いますが、如何でしょうか

Answer:

そうですね、特に駐在員として日系企業で働きながら、学校に通い修士を取得するというのは、本気でコースを完了させる意欲がないとコース修了を達成するのは、周囲の理解もとらないとタイムマネージメント、スケジューリングが難しい課題となると思います。
人それぞれ、予算や時間にも限りがありますから、実現可能な方法を見つけることが、一番よろしいかと思います。 
まず、MBAのコースは、3カ月から5カ月の短期間で学位をとるのは不可能なようです。 
シンガポール国内では、クラスの受講が1年間、その後、研究、修士論文の提出を1年以内に、というのが最短コースです。
ですから、MBAを取得するのに早くても、1年半はかかってしまいます。 
ただ、浜田さんがマスターにこだわらなければ、Certificate in Business Administration(サティフィケート), Diploma in Administrationというディプロマのコースを開設しているところがあります。 
こちらは経営管理のマネージメント知識を基礎から学ぶコースです。
こちらでも、相当なマネージメント英語、理論、ビジネス上で常識的な理論が勉強できます。 
ディプロマコースは、大学によって内容に違いがありますが、典型的な経営管理のディプロマコース一例を紹介します。


“Advanced Diploma in Business Management”

MBA取得コース

by University of Bradford, UK

  • 期間: 最短7カ月~
  • 費用:S$3,500~
  • コース: 週に1~3回の夜間コース

カリキュラム例

  • Marketing Management
  • Management of Human Resource & The Practice of Management
  • Business Information Systems
  • Financial Management
  • Productions & Operations Management
  • Business Economics

“Diploma in International Business”

by University of Bradford, UK

  • 期間: 最短7カ月~
  • 費用:S$3,500 ~
  • 週に1~3回の夜間コース

カリキュラム例

  • Business Statistics
  • Principles of Business Management (II)
  • Business Accounting
  • Fundamentals of Information Technology
  • Organizational Behavior
  • Business Law
  • Principles of Marketing
  • Internet & E-Commerce

浜田さんの場合、これまでのキャリアに専門的な意味づけをするために、以下のようなコースがご予算内ではお薦めではないでしょうか。 
また、社内専門家を目指すなら、英文会計やファイナンスに特化したコースでもいいと思います。
例えば、以下のようなカリキュラムのコースです。

  • Graduate Diploma in Business and Finance
  • Cost & Management Accounting for Decision Making
  • Taxation
  • Strategic Business Planning & Development
  • Corporate Finance
  • Business Law

ただ、今後、経理、財務の専門を深めるのか?それとも、経営企画室や、ジェネラルマネージャーを目指すようなキャリア目標をお持ちでしたら、Business Administration のコースのほうがよろしいかと思います。
会社の経営、マネージメントについて英語での基礎知識と理論を学べるので、これまでの日本の経験に頼った思考だけではなく、「経営的な視点、論理的な思考技術と知識で、他者に論理的に説明し、伝える力」をつけてくれるはずです。
ちなみに、シンガポールには、欧州でトップランクのINSEADというビジネススクールがあります。
そこでは、一カ月の間に5日で学ぶ、Asian International Executive Programme というエグゼクティブ向けのマネージメントプログラムもあります。
こちらのほうが、参加者や講師の質は断然に高く、費用もUS$10,000と、他に較べると高い料金です。
しかし、このクラスの場合は、経営理論の知識はすでに知っていて、マネージメントエリアでの職務経験、高い英語コミュニケーションスキルが求められます。

浜田さんの将来のキャリアの市場価値を高めることを優先して考えた場合、年齢やキャリアから見ても、理想はMBAを取得することだと思います。すでに財務畑での多くの経験をお持ちのようですから、そこに経営管理の知識と戦略策定能力を強化することで、例えば、企業のCFO(チーフファイナンシャルオフィサー)や海外支社の経営者、経営企画室のマネージャーを目指すことも、よいキャリアターゲットになるかもしれません。
マスターコースは、知識は知っていることが前提で、その理論を使ってケーススタディを使い、経営企画レベルでの議論をすることが多くなります。
また、課題をグループで、マーケットリサーチから、市場分析、戦略立案、プレゼンテーションをして、教授から評価されます。そんな課題が毎週のように出されます。
最終的には個人の研究テーマで修士論文をまとめあげ、スーパーバイザーの大学教授から良い評価をもらって、初めて修士が取得できます。
ですから、私達、日本人のようにマネージメントとはなんぞや?ということを理論的に学んだことがなく、OJTだけで学んできた人は、人にマネージメントを説明できない日本人マネージャーが多いので、ローカルマネージャーを育てるためのマネージメント領域の基礎的な理論、英語スキルアップが必要だと思います。
その場合、ディプロマコースでも充分、海外マネージメントの現場では助けになるはずだと思います。
マスターコースは、アメリカのハーバードビジネススクールがそのティーチングスタイルについてグローバルスタンダードをつくったことが大きいのですが、知識を教えるのでなく、知識と理論、経験を使って、クラスでケーススタディ、ディスカッション、チームプロジェクト、自己への挑戦、過酷なタイムマネージメント、異文化間のコミュニケーション、プレゼンの実践を通して、経営学を学ぶことの成果に意義があり、いわゆる知識以外のマネージメントスキルも鍛えられるわけです。
また、そこに集まる優秀な人達とのネットワークもその後の財産になるわけです。

今回、ご紹介したコースは、シンガポール国内の教育機関のほんの一例ですが、他にもシンガポールの私立、国立あわせて8機関にて、4カ月~1年の期間で、働きながら夜間に学べる、ビジネスアドミニストレーションのサティフィケートコースやディプロマコースもあります。こちらは、マネージメントの理論の基礎から学ぶコースですので、欧米系のマネージメント理論について知りたいと思う方には最適かもしれません。また、英語に少し自信がない方でも、ビジネス分野の英語も学べると思えば、お得なコースかもしれません。もちろん、サティフィケートを取得しておけば、また、時間をおいてディプロマコースで学びたいと思った時に、単位を認めてくれる学校があります。ぜひ、浜田さん、この海外駐在のチャンスを活かして、海外で学んでみてはいかがでしょうか。そこで一緒に学んだ諸外国のクラスメイトはきっと、生涯、連絡がとれるお友達にもなると思います。ぜひ、読者の皆さんも働きながら、英語で何かを学ぶ、海外留学経験をしてみてはいかがでしょうか?


具体的にどのコースが、その方のキャリアに最適、有効なのかは、実際に個人のキャリアカウンセリングをしてみないと解りません。今回は個人からのご相談の一例を紹介しました。

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