Asia特集&コラム

キャリアマネジメント

Lesson02.キャリア・トランジッション

前回のコラムでは、「新しいキャリアの考え方」について、皆さんに解説しました。今回は、新しくシンガポールに赴任にした方、この時期に転職、退職した方にも、ぜひそのキャリアの転機に考えて頂きたいことをお伝えしていきます。

「自分」を考えてみる

経営学における、キャリア論の権威、MITのエドガー・シャイン教授は次の三つの問いについて、内省することがキャリアについて考える基礎を提供すると言っています。


「エクササイズ」

エクササイズ

自己イメージのチェック

次の三つの問いに答えて、紙に書き出してください。

  1. 自分は、なにが得意(好きで上達していること)であるか?
  2. 自分は、本当は何がやりたいのか?
  3. どのようなことをしている時の自分なら、意味を感じ、自分が社会に役立っていると実感できるのか?
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この問いには、周りから評価されていることは無視して、自分で「自分」のことをどう思うかを中心に考えて答えることが大切です。
ひとつ、気をつけて頂きたいのは、自分が得意なことを、好きなことだと多くの人が勘違いしてしまうようなのです。
他人が認める、あなたの能力や才能とは違って、「自分が本当にやりたいと思っていることは何なのか?」ということを自分で見つけ出して自己認識することが、自分のキャリアを考える出発点になります。
なぜなら、人は生きている間に、自分が生きている意味を探す生きものなので、自分がやっていることに意味や社会的な役立ちを感じられなかったら、いつか、心が空しくなり、「これでいいのか?」と自問するようになるのです。
自分の得意なことをやっているのに、何か充足感が感じられない、やっていて違和感が消えない人は、第三の問いがクリアできていない可能性があります。
さて、メモに書き出したら、あなたのその答えや、キーワードは次のことを示していることになります。
自分の、

  1. 能力・才能についての自己イメージ
  2. 動機や欲求についての自己イメージ
  3. 意味・価値についての自己イメージ

この自己イメージを確認する作業は、自分を知る、すなわち自己認知をするための最初のステップなのです。
【以上参考文献】働く人のキャリアデザイン:金井壽宏著 PHP新書


キャリア・トランジッション

日本のキャリア論での第一人者、神戸大学大学院経営学科教授の金井壽宏教授は、「キャリアのありようを完全にデザインしきれると思ったら不遜なことで、我々がデザインできるのは、せいぜい節目や大きな選択のポイントであるから、ぜひ、その節目のその時には、流されずに立ち止まり、自分の目指す長期の方向、方角が間違えていないかの確認すること」を強く推奨されています。

1995年~2001年、私は東京で留学、キャリアカウンセリングをしていました。
多くの若者が会社を辞めて、目的も無しに海外留学やワーキングホリデーでお金をもって出かける姿に危機感を持ったことがきっかけで、カウンセリングオフィスを開設しました。
きちんと自分で選んだ目的を持ってから、海外へ行って欲しくて、海外留学のためのカウンセリングをしていましたが、クライエント(相談者)の多くは、「海外に行きたいんです!」ということが大目的になっていて、そこへ行った後の目標が何もない、その後のキャリアなんて何も考えていない。
この場合、アメリカやオーストラリアの空港に飛行機で降り立った瞬間に目的は達成してしまうのです。

その後、海外での新生活は最初、見るもの全てが初めてのことでエキサイティングな生活が始まりますが、やがて、その生活環境に慣れてくる頃、「はて、自分は何をしているんだろうか?なんで、自分はココにいるのだろうか?」という疑問が湧いてくる・・・。
あらためて、ローカルの人に「ここで何がやりたいの?どうしてここに留学してきたの?」と聞かれると、答えられない人が多いのです。
カウンセラーの仕事は、その人自身でその答えや自分のニーズ(本当の欲求)を見つけ出すためのヘルプ、ナビゲート役なのですが、たまに自分がどうしたいのか解らず、「それでは、あなたの好きなことは何ですか?」と聞いてみても、自分のことがまったく解らなくなっている人もいました。
このようなケースの人は、長い間、自分の気持ちや意志をどこかに置き去りにして、周囲の期待を基準に行動をしてきた結果、自分喪失に近い状態になっていることがあります。
これらの現象は、コラムの一回目で、お伝えした、「自分自身のキャリアを自ら設計する権利」を会社や親に差し出してきたことの弊害とも言えるかもしれません。


長期的なキャリア・パス

長期的なキャリア・パス

それでは、誰でもが将来のキャリアに対する不安を持つ私達は、この不安をどう克服していけばいいのでしょうか。
その最初の一歩が長期的なキャリア・パスを自らで設計してみることなのです。
そして、その活路が会社内にあるなら、上司に相談してみる。

もし、相談しても部下の成長の活路を開いてくれない、部下を育てる仕事のできない上司だった場合は・・・。
自分の長期の目的地へつながっていける道があり、やる気をもって成長していける場所(他の会社)を探してみることも、これからの個人のハッピー・キャリアには必要な手段になります。
相談にのれない上司は、あなたの将来どころか、自分の将来もよく考えていないのでしょうから。

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