Asia特集&コラム

キャリアマネジメント

Lesson08.自律型・三次元T型会社員”を目指せ(3)

?日本人マネージャーに求められる、キャリア女性と海外スタッフを育てる能力

会社内でキャリアを磨き、自分の市場価値を高める

前回は、三次元t型スペシャリスト、プロフェッショナルのキャリアモデルについて解説しました。

今回は、最近、シンガポールで出会った自律型三次元会社員の人達と、日本人マネージャーに求められる、「女性や海外スタッフの育成」、「ダイバーシティへの対応力」についてお伝えします。


シンガポールで出会った、自律型三次元的な駐在員

私は、シンガポールに進出してきている企業の海外駐在員や現地ナショナルスタッフの人材開発のためのコンサルティングをメインに、研修の企画・運営や従業員のキャリアパスの策定コンサルティングをしている。

そんな中、最近、ここシンガポールで、自分の部下や海外スタッフのために、会社の組織変革へ自らで取り組もうとする、数名の逞しい日本人駐在員に出会った。

彼らは、会社の規模に関わらず、三十歳~四十歳くらいの海外駐在員マネージャーで、企業全体で言えば、若手・中堅マネージャーである。

最近、彼らはこんな問題意識を持っているようだ。

「シンガポールには、若い優秀なスタッフがいて、彼らは仕事を覚えるのが早い。
しかし、業績を上げているにもかかわらず、長年勤めている人達との給与の差が大きく、それが、スタッフの不満になってしまう・・・
社員にとって、公平性のある報酬制度が必要と思うが、年輩を立てると若手が立たず、若手を立てると年輩がたたずで・・・
何か良いシステムを入れないと、会社にいい人材が残らない気がするんですよね。」

「日本の本社人事担当に、こちらの状況を説明しても、まったく海外現場のことを理解してもらえない。もう仕方ないので、自分で海外スタッフのためにも、シンガポール版の人事制度を導入してみようと思っているんですけどね。」

彼らは、このような人的資源マネージメント(HRM)について、「やれ」と上司から言われた訳ではなく、自らで問題点を見つけ、解決する方法を探し、考え、行動を始めている。
彼らの共通点は、海外市場やシンガポールの現場で、ナショナルスタッフと共に働き、共に問題解決をしてきた経験を持つ、現場のリーダーである。

海外スタッフ達からすると、きっと話せる(相談できる)日本人マネージャーなのだろう。海外のナショナルスタッフが持つ、会社に対する声を聞いて、それを真剣に受け止めている。もちろん、彼らは、自らの職務は営業統括マネージャー等、ワンプレーヤーとしても会社で働く人である。

今、彼らは外国人の部下を持ち、人材マネージメントを学ぼうと積極的になっているようだ。
こういう人達を「自律型社員」と呼ぶ。

客観的に言うと、自らで自分のキャリアを一次元的な職務から、マネージメント(経営)エリアへと、二次元、三次元のキャリアへと自己開発しているのである。

私はこういう人を見つけると、無条件で応援したくなる。日本では、昔から「出る杭は打たれる」という言葉があるが、どうか、周囲の先輩達に、海外で発芽した元気いっぱいの新芽がつぶされないようにと強く願う。


女性のほうが、スペシャリストタイプのキャリア形成に有利?

実は現代女性には、男性よりも色々な働く生き方があることをご存知だろうか。

仕事をやめて、結婚して主婦になる、母親になる。子育てを終えて、また仕事を始めることもできれば、その間、工夫次第で仕事をずっと続けていくことも不可能ではない。
自分は主婦には向いていないから、仕事で能力を活かす。
また、結婚しないという道もありだ。
逆に、やっぱり、自分は仕事には向いていないから、家庭のマネージメント=主婦でやっていく、という人もありだ。

多くは、女性だけが仕事を続けていくうえで、リスクが多いと思っているかもしれないが、逆に男性の場合は、仕事を辞める、主夫になる、子育てをしながらアルバイトで仕事を続ける、じっくりと転職活動をする、思い切って海外転職をする、というような「働き方の選択肢」が極めて少なく、男性は自由度が少ないのだ。
そういう意味では、現代の日本社会では、思い切ったキャリア・チャレンジや、専門性を高めるための転職がしやすいのは女性なのかもしれない。

しかし、日本の社会環境の有り方とは違い、現実的には男女の意識が中性化してきている昨今では、男女を区別した議論は余り意味を持たなくなってきていると感じる。
私は、男女共に企業内で組織の管理職に魅力を感じない人は男女に関係なく「企業内スペシャリスト、プロフェッショナルタイプの三次元t型人材モデル」を、今後目指していくことをお薦めする。
このタイプなら、日本の組織でも、外資系組織でも、男性マネージャーに一目置かれて重宝されることは間違いない。


日本人男性管理職に求められる 異文化コミュニケーション能力

日本企業の背景として、まだまだ女性や外国人管理職を受け入れるための組織環境(女性や外国人を受け入れるための準備)がない、また、人事評価に不透明な風土があったりすると、女性や外国人が組織内でグレードアップするには、障壁がとても高い。
しかし、組織が旧来の日本人男性社会のルールであったとしても、直属の上司が、キャリア開発するためのチャンスをつくって、自分を育ててくれる上司だったら幸運だ。ぜひ、その上司についていこう。人は人によって活かされるのである。
これからは、女性や海外スタッフをうまく活用し、人材を育てていく能力が日本人マネージャーに求められるはずだ。
また、ジェンダーの問題では、男女共一昔前のような、男らしい男性、女らしい女性ばかりではなく、両者共に中性的な感性や、多様な価値感を持つ人が多くなってきている。
一律的な組織の行動文化は、右肩上がりの九十年代までは、新人男性の多くが右にならってやっていたことも、今ではNOと言う男性も多い。

経済環境の変化が当たり前の時代、何か問題が起きた時に、組織や長の決定に、NOと言えない雰囲気を作る組織体質が、悪いほうに働くことがある。
不正や問題を組織ぐるみで見逃したことで、最終的に企業自体の存続の危機に陥ったというケースは皆さんもご存知だろう。
組織の心理というのは怖いもので、組織の中であることを行動学習していくことで、慣習化して、いつのまにか、あるコミュニティのなかだけで通用する、疑う余地もない常識になってしてしまうのだ。
また、周囲がイエスマンだらけになってしまうと、トップが間違えた方向を選んだ場合は、会社ごと沈没してしまう可能性が極めて高まる。

一方、一般社会では同じ日本人同士でも、価値感や行動様式が違う、ダイバーシティ(多様性)が拡大している。
それを普段感じない人は、恐らく同じ行動様式、思考、価値感の人達の領域でしか人と接していないのかもしれない。

そのダイバーシティが拡大する今、自分とは違う行動様式、思考を持つ人との、コミュニケーションの重要性がさらに浮き彫りになってきている。
例えば、「男なんだから」「女なんだから」という一般的な議論は、世代によって、その言葉の意味や捉え方に違いがありすぎて、違う世代間同士で話が通じなくなってきている。
まして、こんな言葉を海外、例えばアメリカの職場で、上司が部下に言ってしまったら、セクシャルハラスメントか、差別的な言動だと訴えられるのがおちである・・・。
日本人管理職の皆さん、どうか、海外での女性への発言にはお気をつけください。

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