Asia特集&コラム

キャリアマネジメント

Lesson05.モバイル・キャリア

〝 他社に移っても通用する、機動力を持つキャリアの形成 〟

境界を超えるキャリア

モバイル・キャリア

工業社会から、ナレッジエコノミー(知識社会)へ変わるなかで、創造的な知識や、問題解決の知識などが企業の利益の源泉となってきている。
知識社会になると今後、個人のキャリアにとっては、組織、企業、業界、国境といった、境界線がなくなっていく傾向が強まる。

タイトルにある、「モバイル・キャリア」とは、皆さんに意味を解り易くするための、私の造語だ。昔は、大切な電話がかかってくる予定があると、家や会社に帰らないとならなかった。今では、携帯電話で、海外にいても電話通信が可能だ。
この携帯電話の存在・機能の進化と同じようなキャリアの進化が「モバイル・キャリア」である。

九十年代後半から、新しいキャリアのあり方について、提唱してきたマイケル・アーサーは、「バウンダリーレス・キャリア」
(Boundaryless Career)と呼んでいる。

モバイル・キャリアとは、産業の境界、企業、組織の境界、営利と非営利の境界、職能専門分野の境界を超えて仕事ができるキャリアのことである。
MobileMobilityとも関係がある語で、移動性、機動性、流動性を意味する。)

まず、典型的な職業モデルとしては、開発エンジニア、ITコンサルタント、映画やドラマのプロデューサー、映像などのクリエィターまたは、ベンチャー企業で活躍する創造的な起業家や、ハイテク産業の開発者、エンジニアが、皆さんの知っているところのバウンダリーレスな職業だ。
いずれも、これまでのいちポジションや職務の一次元的職業ではなく、三次元、四次元的、すなわち「創造的」な職種につく人達である。


モバイルキャリアな人達

例えば、映画プロデューサーは、特定の映画会社に社員として所属しなくても、プロジェクトベースで、どこの映画会社とも仕事ができる。
いずれも、利益や価値を創造する人である。アメリカでは全体の20%くらいの人が、そのようなキャリアを目指しているそうだ。

一般企業では最近、経営のプロフェッショナルと呼ばれる人も登場してきたが、ベンチャー企業の業界、組織では、ビジネスプロデューサーというポジションも増えている。私の友人はなぜか、東京でこの肩書きが多い。
皆、普段は背広を着ていないのが共通点でイノベーションへの熱い闘志と冷静なビジネスマインドを持ち合わせている奴らである。

ベンチャー企業で働く人は、わざわざ、待遇や自己保全の環境が高い仕事環境を捨てる。
既存の組織では、自分の才能や、自分のビジネスの創造力を表現したくても、その可能性をリスクとしか認知してもらえず、しかたなく一流企業を辞めている人も少なくない。
なぜなら、大手企業の組織にいると、組織の形式的ルールを守るための時間とディープな人間関係に神経をすり減らし、創造的な事業立ち上げには、体力も気力も計画も、実現まで到達できないからである。


ビジネスプロデューサーは、起業家だ

私は、これまで、東京、大阪、名古屋、沖縄、北海道の起業家達、おそらく100人近くの学生起業家からベンチャー企業の創業者と対話をし、会社訪問をしてきた。

そもそも、別に新会社を立ち上げなくても、ゼロから、利益を生み出す事業をつくり上げる人は、会社員でも、公務員でも、NPO職員でも、誰もがビジネスプロデューサーなのである。
企業の新規事業や、これまでビジネスモデルがないベンチャー事業の場合、特に人・物・金を外部から調達するのは、大資本の会社に比べると大変な労力がいるわけで、それらをうまく社外から集めてきて、ゼロからビジネスの流れを創っていく、まさに創造者なのだ。

彼らの名刺を見ると、とりあえず日本の慣習に従って、肩書きに代表取締役とか、取締役と小さく名刺に書かれている。

しかし、アントレプレナーやベンチャー企業で、魂をかけてイノベーションを創ろうとしている彼らにとっては、取締役も何だかカッコ悪い気がしてしまう。
だから、ある程度の組織化が進んだベンチャー企業のコアなリーダーはビジネスプロデューサーという肩書きを持つ。

さらに彼らの名刺には必ず、もう一つ専門の肩書きを持つ。
大企業組織の代表取締役とは違い、経営もやるが、会社のコアな優位性事業の現場にリーダーとして携わる、仕事のプロフェッショナルだからだ。このような人材を三次元・T型人材と呼ぶ。

そんな彼らは、「21世紀の新しいキャリア」なんて本さえ読んだこともないのに、本能的に、欲求的に自分の働く環境を、組織と社員のキャリアのあり方に向かって、新しいパラダイムを取り込んでいる。

最後に、その新しいパラダイムの重要なキーワードを皆さんへ別図に紹介した。キーワードをご覧になって、自分の会社には関係ないと思っているあなた!
実は組織で働くあなたにこそ、一番、関係があることなのだ。このキーワードを意識して、今後の個人のキャリアと組織について一緒に考えていただきたい。

組織とキャリア

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